オンライン交流

概要

2020年から新型コロナウイルス感染症が全世界に拡大し、海外の学生との対面での交流が実施できなくなりました。そのような中でも交流を続けることができるように、2020年度から2022年度はオンラインによる交流をしました。

朝鮮看護大学(韓国)

2021年度

トピックグループでの交流の様子
グループごとでの交流の様子

2021年12月に本学主催で開催し、本学からは学生13名が参加しました。交流テーマを「看護学生のセルフケア」と設定し、「看護大学生の一日」「自分の文化における健康的な食生活」「自分の免疫機能を高めること」「看護学生として自分のストレス解消方法」の4つのトピックについて両大学の学生がプレゼンテーションを行いました。交流が活発になるように担当したトピックで作ったグループに分かれ最初に自己紹介をして、全部のプレゼンテーションを聞いた後に再び、グループに分かれ質疑応答をしました。

2020年度

朝鮮看護大学の主催により2020年12月に実施されました。本学からは学生10名が参加し互いに大学紹介をした後、「新型コロナウイルス感染症予防のための看護大生の役割」についてと「新型コロナウイルス感染症に関する保健医療政策」について両大学から報告しました。

参加学生の声

トピックグループでの交流の様子
朝鮮看護大学とのオンライン交流
オンライン交流に参加して
4年(交流時) 新納 碧

2020年は新型コロナウイルスが蔓延し、毎年夏に行われていた海外研修が中止となってしまいました。海外で学べる場がなくなることを残念に思っていましたが、各大学が互いにつながりをもち、学べる場を設けたいとオンラインによる交流会が開催され、参加しました。

交流会では、お互いの大学紹介、コロナ予防対策と看護学生の役割、コロナの現状と保健医療について発表しました。どちらの国でも感染者は増加しており、活動の自粛やオンラインでの講義を余儀なくされていました。私たちは臨地実習に行けず、医療の現場で学ぶ機会は少ないなかでも、学内で意見交換などを繰り返すことでより深く患者さんを捉え、看護について学ぶことができました。朝鮮看護大学の学生も、学内の実習で最新鋭のロボットや病室をイメージしたシミュレーション室を利用し、より実践的な看護技術の修得を図っているそうです。実際に病院実習ができず悔しい思いをしましたが、同じ状況で頑張っている韓国の学生の姿を見てとても勇気づけられました。
朝鮮看護大学の学生は老人施設や福祉施設でボランティアに参加し、利用者との交流をしていました。宮崎県立看護大学では、新型コロナウイルスに感染された方やエッセンシャルワーカーへの偏見や差別をなくすためのシトラスリボン運動を行っており、学生がシトラスリボンを作成し配布しました。
どちらの国でもコロナ禍にある看護学生への影響は大きいですが、その中で自分たちがどう行動できるかを考え積極的に活動し、その方法は違っていても看護学生としての自覚と使命感、行動する力は一緒であると感じました。

今回交流会に参加して、韓国の状況や看護学生の活動を知り、宮崎県立看護大学の感染対策やコロナ禍での活動について勉強することができ、また、同じ医療者を目指す者としてお互いの頑張る姿は励みとなりました。

チェンマイ大学(タイ)

2021年度

7月17日にチェンマイ大学の主催により、タイ、韓国、中国、日本の13大学から189名の看護学生が参加し交流しました。本学からは1年生15名と2年生4名の19名が参加しました。各大学の学生が「食」「祭り・休日」「大学生活」等の8つのトピックに分かれプレゼンテーション、質疑応答のグループセッションを行いました。

タイ、中国、香港の学生たちとの交流
タイ、中国、香港の学生たちとの交流
集合写真 証書とともに
集合写真 証書とともに

参加学生の声

グループセッションの様子
グループセッションの様子
オンラインでも得られる貴重な体験
2年(交流時) 内田 麻友

私はタイのチェンマイ大学とのオンライン交流に参加し、グループセッションでは入学試験や大学生活について発表しました。質疑応答のとき、タイの学生から大学生活、日本で働く外国の看護師、新型コロナウイルス感染症などの質問が次々にきました。このような質問がくることを予想して資料を準備していれば、もっと詳しい説明ができたのかもしれないと思い、より充実した学生交流の時間をもつには事前準備が必要だと学びました。日本にいながら国境を越えた交流ができる貴重な体験でした。

オンラインで交流している様子
オンラインで交流している様子
1年(交流時) 佐藤 優希

私たちのグループでは「祭り・休日」について発表しました。日本で代表的な休日と言えば大晦日・お正月なのでその日に食べるものや行動をメインにまとめました。他にも七草粥やお月見などのイベントを発表しました。準備するところから他の人にどう伝えるのか考えるというとてもいい経験ができました。発表ではほかの国の文化について知ることができたのはもちろん、流暢な英語や積極的に質問する姿に刺激を受けました。オンラインでの交流だからこその人との関わり方を学ぶことができました。

メディストラ大学(インドネシア)

2021年度

プログラム
プログラム

メディストラ大学が2021年8月に開催した講演会に、本学からは学生14名と教員15名が参加しました。講義全体では300名近い参加者がありました。テーマ「パンデミックの時代に精神と社会心理的な健康を支援する」のもと、「コロナ禍における精神的社会的サポートについて」インドネシア大学教授Budi Anna Keliat氏による講演、「コロナ禍における精神看護教育の実際」メディストラ大学教員 Riris Ocktryna氏による講演がありました。また、本学の川村道子教授による講演「パンデミックの時代における精神看護の実際ー人とのつながりを大切にー」もありました。

本学の講演者 川村道子教授より

パンデミックの時代における精神看護の実際ー人とのつながりを大切にー
川村道子教授

COVID-19が発見され、世界の脅威となって2年目に入っています。日本でも感染拡大防止対策の基本方針が示され、ソーシャルディスタンシングが徹底し実施されることになりました。身体へのウイルス侵入を防ぎ、命を守る対策として重要な事項です。
しかし、それにより、社会、経済、教育、医療、看護、その他多くの変化をもたらしました。

精神看護に従事する我々は何をどのように考えたらよいのでしょうか。
精神の不調をきたし、精神疾患に追い込まれる場合、これまでの生活の中で体験された人との関係の中で、不安や心配など悩ましい体験が積み重なり、他人を避けた方が安全だという見方・考え方が作られていった、と考えると、看護がしやすくなります。他人を避けた方が安全だという学びから、他人が近づかないように攻撃したり、自閉的な生活をしたりして、身の安全を一人で必死に守っていると考えます。精神の不調や精神の病を看護ケアによって回復を促せるのか、と考えたときに、他者との関係を心地よく感じ、社会関係における自分の存在を感じ、社会関係の中で他者からも承認されていると確信する、そのように感じ取れるような『ケア』を受けることが回復につながると考えていきます。つまり、人間は人と人の間でつながりあっていなければ、精神の不調をきたしやすくなり、病に追い込まれることにもなるのです。逆に、人と人がつながりあっていれば、健康な心を持つことができると言えます。
しかし、COVID-19によるソーシャルディスタンシングは、身体的な距離を取って、命を守るという意味では重要ですが、人と人をつながりにくくさせてしまいました。
物理的な距離をとることは求められましたが、人と人との心の距離は離れることなく、支え合う社会を実現することは人間にとって普遍的な欲求として存在しています。人間の脳が大きく発達したのも共感力が高まったのも、言葉が生まれたのも、人の輪を広げるためです。
多くの人とつながることが幸福であると信じていたいのです。
今の時代はSNSが発達していますので、ソーシャルディスタンシングを強いられても、SNSを上手に使ってつながりを感じることができます。しかし、SNSがなくても、人は人とつながっていることを感じることができます。人間は素晴らしい能力をもっているので、それをしっかりと使えばよいです。人間の素晴らしい能力とは、いろいろなことを豊かに想像することができる能力です。人間は、大脳皮質が発達しているので、様々なことを豊かに想像することができます。人の顔を思い浮かべたり、良き思い出を想起したりすることもできます。自由に想像する能力があります。その能力を、いまこそしっかり使って、あの人この人と心がつながっているという想像をしましょう。これまでの体験で助けられてありがたかったことや、その人達が頑張っている姿を想像して、自分も頑張ろうと思うこともできます。このように人との良いつながりを持った体験は、その人が生きていくためのかけがえのない宝となります。

COVID-19で大変な時ではありますが、どのような状況であっても、人が人とつながっていて、助けたり助けられたりすることで、嬉しかったり、他者の役に立っていると思いたい、という人間の根源的な欲求を満たすこと、そう思えるように人々に関わることは、精神看護の源流にあるものです。どのような状況でもこのような考え方を持っていれば、全ての人々の精神の健康回復に貢献できると考えます。

参加学生の声

メディストラ大学の講義を受けて
4年(交流時) 内山田 笑佳

現在、世界規模で新型コロナウイルスが流行しており、私たちは今後この新型コロナウイルス感染症という病気と付き合って生きていかなければなりません。そのような中で、「コロナ禍における精神看護教育の実際」についての講義を受けました。講義のテーマは「境界性パーソナリティ障がいのケースへの精神看護と、精神看護サービス提供における新しい日常への対応」でした。新型コロナウイルス感染症拡大防止のためによる自粛などで生活がガラリと変わり、人との交流が薄くなってしまったことにより、精神疾患を患う人が増えています。精神看護のサービスの内容は、精神障がいのある人や、精神の健康問題のリスクを持っている人の心の健康を支えることです。精神の健康とは、身体的、精神的、スピリチュアル的、そして社会的にも成長することができ、自分自身の能力を自覚しストレスに対処でき、そして社会に対して貢献することができる状態です。

今、このコロナ禍の状況では、自宅でのオンライン授業や在宅勤務、新しい生活様式への対応、ソーシャルディスタンスなどさまざまなストレッサーが私たちの周りにはあります。たくさんの人がストレスに押しつぶされて精神を病んでいると思います。また、この講義の中で自殺のリスクがコロナ禍以前より60%も増えていることを知りました。私は、将来、精神看護の領域で看護師として働きたいと思っています。このコロナ禍の時代にしっかりと患者さんのこころを健康な状態に整えていけるようになりたいと感じました。信頼関係を築いていくこともそのような人たちを助けることにつながると考えました。コロナ禍に対応していけるような看護サービスが看護師には必要になってくると思いました。私は看護学生として身体的にも精神的にもしっかりと大学でいろいろなことを学んで成長し、自分の持てる力(看護の知識や技術、おもいやりの心、コミュニケーション技術)を知り、その力を使って看護師としてだけでなく一人の人間として誰かの役に立ち、社会に貢献したいと思いました。

4年(交流時) 細田 汐織

メディストラ大学との交流に参加して、国境を越えて人間の精神について考えている状況に温かさを感じました。精神看護は、人が好きでないと極められないと思います。あの空間には生粋の人間好き達が集まっていたと考えると、貴重な体験をさせてもらえたなと嬉しい気持ちになります。

コロナ禍における精神看護について考える講演の中で、SNSをうまく利用することで、他者との間に自分の存在を認識できるという教えがありました。私はこの考え方がとても印象に残っています。想像以上に長引いているコロナ禍の中で、友達にも会うことができなかった頃、SNSを通して気軽にお互いの状況を共有できたことは大きな心の支えになりました。相手が何をしているのか知れただけではなく、自分のことも知ってもらえたということが重要だったと感じています。不特定多数の人々に発信したいわけではないですが、家族や友達に自分のことを忘れられてしまうことは、とても恐ろしいことだと思います。人は、誰かに必要とされることで自分の存在を確かめているのだと改めて学びました。そして、この学びは精神看護を考える上でも糧になります。SNS上に限らず、人から興味を持ってもらえると嬉しいものです。精神疾患の方が社会関係のなかで他者から承認され、必要とされていると確信をもつことがどれほど困難なことなのか、そのすべてを理解することはできません。しかし、そこに寄り添い、働きかけるような看護を意識的に行えたら、患者さんの回復につながると思います。

「他人とつながっていることを想像できる」という人間の能力を強みと捉えると、未来はとても明るいです。